桜井こけしができるまで

桜井こけしのこけしづくり

櫻井家のこけしづくりは、木地をで形を作り
模様を描くだけではありません。
原木の仕入れから乾燥・製材を行い、
木地を削るカンナ棒などの道具も
自分たちで作っています。
原木の乾燥具合や、道具の微調整など、
全ての仕事がこけしの仕上がりに関わります。
桜井こけしでは、1年以上の時間をかけて、
ひとつひとつの工程を
大事に、
丁寧に、こけしを作っています。

こけしづくりは
木と向き合うことから
はじまる

空気が冷たく済んで、冬の便りが今にも聞こえそうな頃、木材が工房に届きます。
東北地方の山々の木材を使って作られる櫻井家のこけし。
こけしづくりは、鳴子温泉の四季の移ろいを色濃く感じながら、自然の中で木と向き合うことからはじまります。

原木の乾燥

伐採
葉枯らし

木の成長が止まる秋に切った木は、葉をつけたまましばらくその場で乾燥させ、枝を落として雪が降る前に工房へ届けられます。木が届くまで、皮を剥ぐ道具の刃を研ぎ、乾燥場の足場や屋根の準備を進めます。

皮むき
屋外乾燥

届いた木をバンガギという道具を使い、一皮一皮手作業で皮を剥ぎます。皮を剥いだ木は井桁に組みその上に屋根をかけて自然乾燥させます。雪に埋まっては掘り起こす。冬の雪かきも工人の大事な仕事です。

乾燥度合いの
見極め

急激な気温の変化で木が音をたてて割れる「春はしゃぎ」を防ぐため、木の状態を個別に見極め、乾燥が進んだものから工房内での乾燥工程へ移します。自然乾燥の難しさに根気強く向かい合いう季節です。

屋内乾燥
製材

工房の周りが新緑に包まれる頃、梅雨の前に雨と湿気から木を守るため、井桁をばらし工房へ移します。こけしの大きさに合わせて製材する「玉きり」「木取り」を行い、屋内でさらに乾燥させます。

木地場

木地挽き

一年ほどかけてしっかり乾燥させた木を木地場へ。木地をろくろの軸に固定して回転させ、こけしの形に削っていきます。木地を削り、模様を刻むためのカンナ棒や、粗い部分をなだらかに仕上げる薄刃など、道具も全て手作りです。

とくさ・いな草

秋に刈り取った、「とくさ」と「いな草」を束ねて、天然のヤスリとして使い、きめ細かい艶を出します。「とくさ」「いな草」も自家栽培で毎年育てています。

首入れ

頭と胴をそれぞれ作り、ろくろの回転を利用して、首の突起を胴にあけた小さな穴に一気にはめ込みます。摩擦熱で表面が一時的に柔らかくなる木の性質を利用した「はめ込み式」は鳴子こけし特有の技法です。

描き場

描彩

こ細密な筆使いによって命を吹き込みます。子どもの顔に似た面相に、お祝いごとの象徴である頭部の水引手、胴に施された菊模様は、伝統的な鳴子こけしの特徴。一つひとつ手で描かれることで、独特の佇まいを帯びていきます。

木地場

完成

完成

最後にもう一度木地場に戻ってきたこけしを、ハゼの実のろうやミツロウで仕上げて艶をだしたら完成です。

よりいい鳴子こけしを作り、伝えるために

道具づくり

櫻井家には「道具は美しく、綺麗でないといけない」という先代からの教えがあります。カンナ棒や薄刃などの道具は全て自分で作り、鍛治仕事も行います。また、こけしを磨く道具は、トクサやいな草という植物を束ねて作り、その素材となる植物の栽培も行います。道具にも櫻井家のこけし作りへの想いが詰まっています。

ミズキの植林活動

こけし作りに使われるミズキの木を植林しています。先代の櫻井昭二が次の世代を想って、仲間たちとミズキの植林を行なっていましたが、工人の高齢化と後継者不足で途絶えていた植林活動。その想いを受け継ぎ、2019年に再開することができました。森を守り再生する活動で風土を未来へ繋げます。