コラム
祭りと町の人々②
前回のお話に引き続き、
宮本たねさん、佐藤タケヨさんを中心に、
町の人々の「こけし祭り」への思いを、探っていきたいと思います。
その頃のお祭りっていうと、ひと月位前からウキウキしてね。祭りの日は店も休み。駅前から温泉神社の下まで出店もいっぱい並びました。うちの店の前にも毎年決まったおばさんが店を出して、もうなじみでしたよ。「こけし祭り」といったって、子供のみこしは出るし、組合が仮装に凝るし、こけし工人さんだけじゃなくて、町の人が張り切ったものだったんです。 (佐藤タケヨさんのお話から)
この町を挙げての祭りの盛り上がりに、とても驚きました。
お祭りが近づくのと同時に、町全体からの高揚感が感じられます。
中には仮装行列をつまらない、という人もいたんですよ、そんな人には私はすぐ反論して、「こけし祭りは地元の人が、町を愛して楽しむためにやっているんですよ」と頑張ったものです。 (宮本タネさんのお話から)
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二人のお話は、共通して、
「こけし祭り」は、こけし工人さんや旅館の主人たちを中心に、
町が一体となって、みんなで盛り上げたお祭りということが分かります。
それが「こけし祭り」の最初の姿であり、本質であり、
人々の町への思いであるような気がします。
当時頑張った女の子たちも、いまはもう六十歳位。たまに遊びにくると、「あの頃は楽しかったね」と話していきます。(佐藤タケヨさんのお話から)
年を重ねた時に、こんな台詞が言えるほど、
一生懸命何かを作り上げた共通の思い出があるなんて、
とても素敵だなと思いました。
( 文: 児玉紗也加 )